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還暦過ぎのITはつらいよ!

ノンフィクション

おそまつ農業日誌回想

百姓は辛いよ 上から下から横から!!

2003年11月19日黒姫開拓地畑

私の畑は黒姫開拓地に30アール、信濃町落合に90アール、田圃が信濃町北中島に20アールある。そこはすべて長野県である。私が住んでいる所が新潟県なので毎日県境をいったりきたりしている。すべて20㎞の距離があり、畑と田圃どうしも2㎞から9㎞離れている。越境通学ならぬ越境百姓ということになる。

3カ所すべて妙高山、黒姫山、戸隠連峰、飯綱山がみわたせる風光明媚な所にあり、私の農地の唯一自慢できる所である。そして集落からはなれており、ちょっとしたハイキング気分になれるのもほかでは味わえない事だろう。

ところがそのことが思いも寄らぬ悲劇を呼ぶことになろうとは。

8月30日曇り一時晴れ

2010.8.13信濃町落合の畑
2010.8.13信濃町落合の畑


午前中宿の仕事をすませ昼より落合の畑へ行く。
冬用のきゃべつの追肥土寄せ、さといも人参の追肥をする。

さといもは「里芋」というだけあって、ここでは成長がよくない。今年もこのままでいくとはたしてものになるだりうか。


ところでこの間収穫をおえたジャガイモの小芋のはいったコンテナがまた倒されている。けものの仕業だろうか。畑に大きい足跡があちらこちらのこっている。いつもくるキツネにしてはちょっと大きすぎる。まさか熊ではないだろうか。でも黒姫では良く聞くが落合で未だかつて熊がでたと言う話は聞いたことがない。はて、、、、、、。

逃げ出した放牧豚
逃げ出した放牧豚


突然茂みを激しく揺らす音。そしてこちらにむかってきている。何事かと思っていたら、ひょっこりと巨大な豚が。おおっ。
(巨大というのは大げさで実際は普通の大きさの豚である。)
そしてのしのしと畑の作物を踏みつけながら私の目の前を横切って行き、おもむろに枝豆をむしゃむしゃと食べ始めた。


私はしばしその巨体故かただたじろえるばかりでいたが「このままではすべてやられてしまう。」と思いあわてて長い棒をふりかざす。尻をたたかれた豚は一瞬こちらに向かって攻撃をしかける素振りをしたもののめんどくさそうにまた茂みの方に逃げてゆく。


「なんでまた豚がこんなところに。」

確か500メートル先に自然放牧の豚牧場があったっけ。たぶんそこの豚だな。
案の定放牧場の柵が風によるものか豚が突進してなぎ倒したのかわからないが一部壊れている。

ちょうどちかくの茂みでいつものように軽トラの座席をベッドがわりに寝ている地主のおじいさんに事情をきいてみる。ふとそこにまた例の豚が100メートル先にひょっこり顔をだす。あわてて二人で追いかけると柵こあるところまで追いつめたものの柵のまわりをぐるぐる回って再び茂みの中へ。おじいさんは私に向かって「くそ。しょうもない豚だ。今度見かけたらぶっ殺せ。」と血圧がググッとあがらんばかりの興奮気味である。

「こんな性格の人だったっけ?」

おじいさんが「この柵どうにかしろや」とけ飛ばしたところ中にいた豚も興奮しすべて柵を越えて逃げていってしまった。
ああっなすすべもない。
持ち主の家にいったが留守をしており、しかたがなく、おじいさんに伝えてもらうようお願いをしておく。


9月1日曇り一時晴れのち雨

夏の信濃町落合の畑は野菜がひしめいている。
夏の信濃町落合の畑は野菜がひしめいている。


新井の農機具やへトラクターの刃をとりにいきそのまま落合の畑へ。
トラクターの刃を取り付けようとしたところサイズがあわない。確か現物を持っていって確認してもらったのに。くそー。


ちょっと遅れ気味になったが白菜の苗を移植、漬け大根を追肥しパオパオ(寒冷沙)でおおう。これをかけないと虫に穴だらけの簾のようにされてしまう。


そこへまた例の豚、今度は3頭でおめみえ。追い払ったがたまねぎの苗をすべてひっくりかえされ蕎麦をなぎ倒しながら逃げていった。おかげで蕎麦畑を真っ二つに分ける獣よろしく一直線の道ができてしまった。


9月2日曇り一時晴れ

信濃町の畑は1haの広さがある。
信濃町の畑は1haの広さがある。


秋の天候となる。落合畑にて野沢菜播種する。毎年このタイミング。
ところで豚は夜小芋をけちらした気配があるがこの日はあらわれず。どうやら観念したか。


9月6日曇り一時雨一時晴れ


米糠ぼかしをつくる。来年の稲の育苗用床土作り。糠50㎏に対し山土150㎏混ぜる。何日かたつと発酵して熱くなってきたところで切り返しをする。白い粉がふき切り返しを何回か続けていくうちに温度も低くなり白身が薄れてきたら切り返しをやめじっくり寝かせるのである。


9月10日曇り一時晴れ夕方一時雨

足ふみ脱穀機、戦前に作られたであろう年代ものを拾ってきた。
足ふみ脱穀機、戦前に作られたであろう年代ものを拾ってきた。


小麦脱穀。刈り取りは確か6月半ば。本当は夏前には収穫したいところ。どうしてもこの時期は予定たたず、いつもこの時期にずれ込んでしまう。去年は外に干しっぱなしにしていたため、濡れて穂発芽してしまい半分カラスのえさにしてしまった。今年は小屋の中にいれて干しておいたので大丈夫。雨が降ってきたので唐箕(風力による選別)かけられなかった。
田圃へいってみると古代米(赤米)穂がやっと出そろう。こしひかりに比べ30日遅れ、早生米(このあたりの奨励品種)からでは40日おくれ。果たしてものになるだろうか。茎、背丈は実にみごと。


9月11日曇り一時晴れ夕方一時雨


ゴマ枝しばる。このタイミングを逃すと枝が自由奔放に枝を開かせ収穫するときゴマが落ちやすくなってしまう。


9月23日曇り時々晴れ一時雨


このところ毎日のように雨ばかり。やっと雨があがる。ついこの間収穫したばかりの小麦を播種する。約7アール。大麦、タマネギ(豚にやられたのでまきなおし)、そらまめ、絹さやも蒔く。すべて来世紀収穫するもの。


10月5日曇り一時晴れ

02_9_26kさんたちときのことり
02_9_26kさんたちときのことり


朝突然Kさんから℡あり。キノコ取りのおさそい。毎年のことでもう年中行事ということになっていた。三水村の山林にはいる。この辺はあまり観光地化されておらず、かといって深山険しいというでもなくなかなかのどかなところ。ウラベニホテイシメジとサマツとサクラシメジをとってくる。とくにウラベニホテイシメジはじゅくが太くいかにもきのこらしい。ちょうど同じところに毒キノコのクサウラベニタケがはえているので慣れていないと見分けがつきにくい。

涌井センターで蕎麦を食べ、帰宅。さっそくホテイシメジをてんぷらにしておろし大根をきかせた天つゆでいただく。独特の苦みはあるもののしこしこしておいしい。


10月8日曇り


午前中笹ヶ峰夢見平の山にはいる。家から20分のところ。ぶなはりたけ、やぶたけ(ならたけもどき)、早生なめこをとってくる。家に戻りこんどは落合畑へ。今年もこの辺の森にはたくさんの栗が実をつけている。3カ所回るもちょっと最盛期を逃したらしく、半分ぐらい落ちており虫だらけ。それでも3個に1個は大丈夫。キャベツ、しそ、大根、枝豆、人参もとってゆく。すべてお客様の食事の材料となる。


10月11日晴れ


午前中宿泊の仕事をかたずける。
そうじを終えやれやれとしていると突然℡がかかってきて「30分以内にきてくれ」と落合のそばかりの仕事。急いでかけつけてみるとだれもいない。おかしいと思いつつ待つこと1時間、やっとオペレータの人が現れる。なんともせっかちな、、、。


2時間半ほどで6反の蕎麦畑を刈り取る。約18袋。最悪の昨年よりは4袋ほど多いがいつもの出来ではない。やはり暑かった気候のせいなのだろうか。半分ほどふるいにかけるもあたりが真っ暗になりあきらめる。夜はなんだかあたたかく、乾いているような気がする。


10月13日曇り時々晴れ

09_10_20蕎麦の実をシートに載せ、乾燥させる。
09_10_20蕎麦の実をシートに載せ、乾燥させる。


蕎麦を天日で乾燥する。2日目。乾燥状態良好。500㎏をシート4つに分け粒全体に日光があたるように薄く広げる。毎日広げて干してたたんでのくりかえし。見た目以上の重労働である。その合間で大麦を脱穀する。6月初旬に収穫したものである。小麦同様蒔いてからほとんど手をかけなかった(かける余裕がなかった)ので収量もわずかである。毎年収穫しておきながらそのままなにも利用していないので倉庫にたまる一方である。それでもまた今年つくってしまう。なんとか利用しなくては。


そこへまたあの豚が3頭現れる。たしか1ヶ月ぶりの再会である。あまりうれしくないのだが。
観念したはずじゃなかったのだろうか。

聞くところによると、所有者のkさんは農業のかたわらきのこ栽培をやっており、最近きのこの値段が下がったために採算があわず、餃子づくりに鞍替えした様子である。なぜ餃子にしたのか、この自然放牧の豚を売りにするつもりだったのかその真意はわからない。でもこの餃子ずくりもうまく行かず借金を抱えたまま逃げ回っているらしい。そういえば夏からずっと豚に餌をあげているのをみたことがなかったっけ。私にとってはとんでもない事だが、豚とはいえ生き物である。柵を越えてでも近くにある餌を求めて飛び回るのは当然のこと。豚には罪はない。 しかし今豚なんとかならないのだろうか。


10月18日曇り一時小雨のち時々晴れ

02年9月13日赤米とこしひかり
02年9月13日赤米とこしひかり


雨は4日続いた。久しぶりの太陽の光である。だがすっきりとは晴れない。まだ蒼さが残る古代米1アールを手刈りする。それを落合畑に持っていきはさがけする。刈り取るには少しはやすぎるかもしれない。だけどこの秋のか細い日差しではもう登熟しえないだろう。古代米はあまりにも晩稲すぎてこの地ではこれが限界とみる。


さて、蕎麦も広げなくちゃと思い、シートのところへ行くとあちらこちら蕎麦粒が散乱している。まさかとは思いシートを良く見てみるとビニールに無数の穴があいている。蕎麦は前日までの雨でシートの穴をとうして水に濡れ、しっかり水を吸い込んでしまった。また乾燥作業がふりだしにもどる。なんたることか。いったい誰の仕業だろう。そういえば稲を運んでいるときにカラスがたくさん畑の方でさわいでいたっけ。豚の次はカラスか。まわりの作物を点検してみる。干してあるあずきも少し蹴散らされている。野沢菜は一部根っこを残してかじられている。野沢菜をかじるカラスなんているのだろうか。でも昨年はあの堅いかぼちゃもかじられていたな。ここのカラスは甘く見るととんでもない。なんでもかじる。いつもは田圃のこぼれた稲や蕎麦をねらっているはずなのに。稲刈り蕎麦かりが今年ははやかったからだろうか。


ところでかぼちゃはとふりかえってみる。冬の保存用にとそろそろとらなくちゃと思っていたかぼちゃが一つ残らず消えうせている。

「そんなばかな」

つい2,3日前は確かにあった。記憶は確かである。獣の仕業であれば証拠はみえみえであるが、なにも残っていない。以前にもあったことだが、誰かしっけいしてしまったのだ。「これだから油断できない。」


豚にやられカラスにからかわれ人間にこけにされる。すきあらばたたかれる。上から下から横から敵はどこからでも攻めてくる。


のどかそうな山村で日夜くりひろげられる人間と生き物たちのしたたかさのせめぎあいでありました。


以上、1999年、世紀末におきた、ローカルな出来事でした。

なお、あれから20年、宿も、農業も、過去の事、

おとなしく、南アルプス山ろく、団地の片隅で、

妻の介護をしつつ、引きこもり生活をしております??!!

05_11_15たぬきに出くわす。
05_11_15たぬきに出くわす。

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