最近、団地の北側の棟の外壁塗り替え工事がありました。
「これは一大事だ!」と思い、化学物質過敏症の妻を抱えて避難せざるを得ないかなあと考えました。
工事の関係者に当方の事情を説明したところ、「匂いも、騒音も出しませんので大丈夫です。」という返答が返ってきました。
実際、工事が始まり、その影響を懸念していたが、心配していたほどではなかったです。
塗装業界も以前のような住民からの匂いなどの苦情に対処するためにいろいろと考えてきているのだなあと実感しました。
そこで環境に優しい塗料とはどういうものだろうと調べてみました。
目次
- 塗装に使われる塗料とは
- 塗料の溶剤はvocとなる。
- シックハウス症の原因物質であるホルムアルデヒド
- 塗料の一般的な使われ方
- 塗料に含まれるvoc、ホルムアルデヒド、その他の化学物質の人体および環境に与える影響
- 自然塗料は地球にも人にもやさしいか?
- 次世代の塗料といわれる光触媒塗装
- 政府や企業の取り組みによりvocの大気中放散量は減ってきている。
- 人や環境に優しい塗料であるために
塗装に使われる塗料とは
顔料、添加剤、合成樹脂、これらの3の成分を混ぜ合わせたものを言います。
その役割は以下のようです。
- 顔料:色やツヤを決める役割
- 添加剤:塗膜を均等にする塗膜に特別な機能を持たせる役割
- 合成樹脂:耐久性などの保護機能の役割
塗料は、いろいろな原料を組み合わせて出来ています。それを大きく分けると「塗膜にならない成分」と「塗膜になる成分」に分けられます。
前者は揮発し、後者は固形化するのです。「塗膜になる成分」は主要素(樹脂)・副要素(添加物)・顔料に大別されます。
顔料が入っていない物がワニス、クリアーなどの透明塗料で、顔料が入っている物がエナメル等有色不透明塗料になります。
塗料の中で室内の空気を汚染する物は、主に「塗膜にならない成分」ということになります。
「塗膜にならない成分」はいわゆる溶剤のことです。溶剤は、樹脂を溶かし、塗料に流動性を与え、塗りやすくするために欠かせないが、塗膜には残らず、空気中に揮発、蒸発にします。そのことにより空気を汚染するのです。
溶剤が水である水性塗料と、溶剤にトルエン、キシレンなどを用いた油性塗料が塗料には主としてありますが、油性塗料に主に使われるトルエン、キシレン類が人体に大きく影響を及ぼすわけです。
塗料の溶剤はvocとなる。
VOCとは、『Volatile Organic Compounds』の略で、日本語に訳すと『揮発性有機化合物』ということになります。塗料の塗膜にならない溶剤はこれに当てはまります。沸点が100℃から260℃の化学物質を総称してVOCと呼びます。但し、常温でも少なからず気化するので揮発性という名称がついていると思います。
厚生労働省では、人が健康に住めるための目安となる室内濃度指針値(13物質)を公表しています。溶剤として広く使われてきたトルエン、キシレン、その他エチルベンゼン、パラジクロロベンゼン、スチレン(モリマー)、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-プチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルへキシル、ダイアノシン、アセトアルデヒド、フェノブカルブとなっております。
vocイコール上記の物質であるという概念には相当しないのですが、一般的にはこれらの物質がvocとしてフォーカスされているようです。このうちシックハウス対策として規制の対象となっているのはホルムアルデヒドとクロルピリホスだけであり、その他は自主規制としてあつかわれております。建築基準法に基づくシックハウス対策について”. 国土交通省
これらの物質の濃度指針値は以下のようになっております。
化学物質 | 指針値* | 主な用途 |
---|---|---|
ホルムアルデヒド | 0.08ppm | 建材を加工するときに用いられる合成樹脂、接着剤、防腐剤等 |
アセトアルデヒド | 0.03ppm | 接着剤、防腐剤等 |
トルエン | 0.07ppm | 内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
エチルベンゼン | 0.88ppm | 内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
キシレン | 0.20ppm | 内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
スチレン | 0.05ppm | ポリスチレン樹脂等を使用した断熱材等 |
パラジクロロベンゼン | 0.04ppm | 衣類の防虫剤、トイレの芳香剤等 |
テトラデカン | 0.04ppm | 灯油、塗料等の溶剤 |
クロルピリホス | 0.07ppb | しろあり駆除剤 (小児の場合は0.007ppb) |
フェノブカルブ | 3.80ppb | しろあり駆除剤 |
ダイアジノン | 0.02ppb | 殺虫剤 |
フタル酸ジ-n-ブチル | 0.02ppm | 塗料、接着剤等の可塑剤 |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 7.60ppb | 壁紙、床材等の可塑剤 |
シックハウス症の原因物質であるホルムアルデヒド
無色、刺激臭、常温では気体(沸点-20℃)であるため実はvocには分類されません。水によく溶け、5~37%の水溶液をホルマリンという。
合板や内装材、家具、防腐剤、殺菌剤等に含まれることが多い。また喫煙や石油やガスを用いた暖房機器によっても発生する。
非常に安価な防腐剤なので、かつては壁紙用の接着剤に使われてきました。しかし、ホルムアルデヒドが発ガン性物質として非常に疑わしいということがわかって以来、各国で使用を中止しているので、最近では接着剤に使用されていることはほとんどありません。
問題になっているのは、材料に含まれているものではなく、潜在ホルムアルデヒドで、これらは熱分解などで材料の中から分離して出てくるものなのです。原材料に含まれていなくても、別の物質が熱で変化してホルムアルデヒドになって出てくる可能性がある、ということです。空気中にも微量ですが含まれていますし、沸点が-20℃で簡単に気化してしまうので、家具などに含まれているだけで、石油ストーブを使用したり喫煙したりすることでも発生してしまいます。室内から完全に排除する、ということが非常に難しいのが現状です。
F☆☆☆☆(Fフォースター)は、JIS工場で生産されるJIS製品に表示することが義務づけられている、ホルムアルデヒド等級の最上位規格を示すマークです。2003年3月21日の壁紙の日本工業規格(JIS)改正によって、ホルムアルデヒドの放散量の性能区分を表すために新たに表示することが決められました。
「F☆☆☆☆」マークの「F」はホルムアルデヒド、「☆」の数が多いほどより放散が少ないことを意味しており、その中で最も少ないものが「F☆☆☆☆」です。
建材(塗料も含む)はホルムアルデヒドの放散量により、下記のようにFスターで分類されています。
- F☆☆☆☆:使用面積制限なし
- F☆☆☆ :使用面積制限有り
- F☆☆ :使用面積制限有り(F☆☆☆より使用面積は少なくなる)
- マーク表示なし:使用禁止
塗料の一般的な使われ方
建物の内装として使われているのはvocの発生が少ない水性溶剤の塗料が主流です。これは人体の安全性を考えた選択の結果であるといえます。
外装に関しては、vocの事よりも 耐久性、耐候性を重視した塗料が使われています。公共建築改修工事標準仕様書対応 日本ペイント製品塗装のおいてもvocの発生量の一番少ないF☆☆☆☆ランクのものを内装作業に使うことを義務ずけております。外装についてはvocやホルムアルデヒド放散の規定はないようです。
また、乳幼児や化学物質に過敏な人は、F☆☆☆☆のものであれ、自然塗料であれ、安全と思われていたとしても、反応してしまうことがあるので、体に影響を及ぼさない塗料の選定、作業手順に慎重にならなければいけないでしょう。
塗料に含まれるvoc、ホルムアルデヒド、その他の化学物質の人体および環境に与える影響
人体への影響
- トルエン、キシレン
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労働環境における許容濃度として100ppmが勧告されている。480ppbあたりに臭いの検知閾値があるとされる。高濃度の短期暴露で目や気道に刺激があり、精神錯乱、疲労、吐き気等、中枢神経系に影響を与えることがある。また意識低下や不整脈を起こすことがある。
また、比較的高濃度の長期暴露により、頭痛、疲労、脱力感等の神経症状へ影響を与えることがあり、心臓に影響を与え不整脈を起こすことがある。発がん性の指摘はない。。塗料・トルエン・キシレン - ホルムアルデヒド
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ホルムアルデヒドとは濃度によって粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こし、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質のうちの一つとして知られております。塗料・トルエン・キシレン
- クロルピルホス
- この物質を含む建材は改正建築基準法2003年7月1日において居室を有する建築物への使用が禁止となっています。殺虫剤としてゴルフ場で使用されたり,住居の防蟻剤やシロアリ防除剤,家庭用殺虫剤や防虫畳としても広く使われてきたようです。
ホルムアルデヒドと同様にシックハウス症の原因物質であり、人体に入ると、けいれんやめまい、吐き気、頭痛などを引き起こします。建築基準法改正による「シックハウス対策 - 重金属 鉛
- 塗料の塗膜になる部分です。鮮やかな色を出す顔料などに使われてきたのですが、その毒性が知られるようになり最近では使用が制限されているようです。「鉛フリー」という表示で販売されている塗料がみられます。
鉛は酸化すると鮮やかな色をもつため炭酸鉛は白、四酸化三鉛は赤、クロム酸鉛は黄色の顔料として、また、鉛の化合物は防錆塗料としても活躍してきた歴史があります。
鉛は、血液中の鉛濃度が高くなると中毒症状が出て、脳や神経に影響を与えることが現代の研究で明らかになりました。もともと自然界にも鉛は存在し、食物にもわずかに含まれているので、実は私たちは日常的に鉛を摂取しています。しかし食物由来の量では、自然に体外に排出されるため問題はありません。
おもちゃや公園の遊具に鉛含有塗料が使われていて、小さな子供がその破片を誤って口にしてしまい中毒をおこしたり、鉛が使用されている水道管を通して汲んだ水を飲んで中毒が発生したという報告もあります。鉛含有塗料について
地球環境への影響
メタン、エタン、ベンゼンなどの炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、アルデヒド類などが揮発性有機化合物に含まれます。
揮発性有機化合物はどのようにして大気中に放出されるのでしょうか。大きく分けて人間活動を通して排出されるものと、自然に放出されるものの2 種類があります。
大気中に放出された揮発性有機化合物は、化学反応を通して別の化合物へ変化していきます。この反応で重要な役割を果たしているのがOH ラジカルとよばれる酸化剤です。
OH ラジカルは、水分子H2O から水素原子を1 つ外したものに相当し、他の原子・分子と結合をつくることができる不対電子を持っています。
ラジカルの生成と消失を繰り返しながら複数の過程が連続的に起こる反応をラジカル連鎖反応といいます。NOx が光化学スモッグの要因であることは比較的広く知られていますが、その主成分であるオゾンの生成を抑えるためには、NOx だけでなく、人間活動から排出される揮発性有機化合物の量を減らすことも重要なのです。
揮発性有機化合物の酸化反応は、オゾンだけでなくPM2.5 に代表される大気中のエアロゾルの生成にも深く関わっています。
エアロゾルは、その生成過程によって、一次エアロゾルと二次エアロゾルとに分類されます。
一次エアロゾルとは、粒子の状態で大気に直接放出されるもので、黄砂などの土壌粒子や花粉、燃焼過程で発生するすす粒子などがこれに含まれます。
二次エアロゾルとは、気体の状態で大気中に放出された成分が、大気中の物理・化学過程を通して液体・固体状態のエアロゾルとなったものです。
一次エアロゾルとともに、揮発性有機化合物の酸化反応から生成した二次有機エアロゾルが光をさえぎるからです。黄砂や花粉など自然起源の一次エアロゾルは粗大粒子となるのに対して、二次エアロゾルと人為起源の一次エアロゾルは、主に微小粒子に属します。中でも二次有機エアロゾルはPM2.5 の主要な割合を占めています。
PM2.5 の低減のためには、二次有機エアロゾル生成機構の理解と、それに基づいた揮発性有機化合物の有効な排出削減が重要となります。塗料における有害性重金属対策の現状2003 塗料の研究 No.140 May 2003より
自然塗料は地球にも人にもやさしいか?
合成樹脂の塗料ではなく、自然界にあるものを塗料にしたものが出回っております。一般的に使われているのではないので、はっきりとした基準がないので、規制の枠外になっているようです。
自然塗料とは~種類とその原料のまとめ
「自然塗料は原料に石油や合成顔料を含まない天然の素材を主原料とした塗料です。
古くから柿渋などが用いられていましたが、亜麻仁油、白ロウ、桐油、カルナバロウ、コパル、蜜ロウ、ラベンダーオイルなども原料として使われます。
自然塗料について
海外では自然塗料と名乗るには明確な基準がありますが、日本においては自然塗料の基準となる法令などはありません。
塗装の種類/自然塗料
自然塗料の先進国ドイツでは、自然塗料と自然系塗料の違いは明確に分類され、無公害塗料、健康塗料といった曖昧な塗料の名称は全くなく「合成塗料」「自然塗料」「自然系(偽塗料)」「エコロジー塗料」の4つに分類されています。また塗料の原料調達から生産、製品使用から廃棄に至るまでのライフサイクルのすべての段階で、環境に負荷を与えないための評価手法「LCA(ライフサイクルアセスメント)」が厳格に用いられています。
- 合成塗料
- 塗料の成分に石油系化合物を含むものです。
- 自然系塗料
- この自然系塗料に使用されている溶剤は、法的拘束力のない「イソパラフィン」を主たる溶剤とし、使用しているメーカーでは「自然塗料」として販売しているのが実態です。脂肪族炭化水素の溶剤イソパラフィン(別名:イソアリファーテ、イソアルカン)はにおいのない石油化学の産物で、低価格のため自然塗料の溶剤に汎用され、少量のバルサムテレピン油柑橘油を添加して自然塗料と称して販売されています。
- 自然塗料
- これは、塗料成分が石油系成分ではなく再生可能で危険性のない、天然原料を100%使用し住居社に健康障害を与えない、土に捨てても環境に何ら悪影響を及ぼさない塗料のことです。
しかし、植物由来のテレピン油・パルサムテレピン油・柑橘油を溶剤として使用しているため、発揮性有害物質であることには変わりません。- 柿心シリーズ(植物水溶性塗料)
- 純植物油、植物ロウ及び還元性電解アルカリイオン水を配合し状態制御誘導効果を発揮する機能がその配合成分を木部の内部まで浸透、馴染ませることと共に他の自然塗料に類を見ない乾き性・消臭性・防微性・防腐性に優れた世界初の植物水性塗料です。通常、塗料や内装材、建材で、「ホルムアルデビドの放散量の性能区分」を示す為、JIS製品にFと星の数により危険度を表示することが義務づけられていますが、この柿心シリーズは発揮性有害物質を含まないため、表示義務すらありません。
以上の事から自然塗料といってもホルムアルデヒドやVOCを発生させるものもあるため、一概に安全と言えない点には注意が必要ということです。
次世代の塗料といわれる光触媒塗装
光触媒の原理は東京大学の藤嶋昭さんと本多健一さんの共同研究による成果「本多-藤嶋効果」と呼ばれる水中の二酸化チタン:TiO2とプラチナ:Ptに、光を照射することで、水が分解されて二酸化チタンから酸素が、プラチナから水素が発生することを発見したことに端を発します。
光触媒とは
光触媒は光があたると触媒作用(その物質は変化せず、周りにある化学物質の化学反応の速度を変えること)を発揮する材料です。その原理は以下のように説明されています。
- 1.紫外線を当てる
- 光触媒(二酸化チタン)に光(紫外線)が当たると、その表面から電子が飛び出します。
このとき、電子が抜け出た穴は正孔(ホール)と呼ばれており、プラスの電荷を帯びています。- 2.OHラジカルの出現
- 正孔は強い酸化力をもち、水中にあるOH-(水酸化物イオン)などから電子を奪います。
このとき、電子を奪われたOH-は非常に不安定な状態のOHラジカルになります。- 3.有機物をバラバラに!
- OHラジカルは強力な酸化力を持つために近くの有機物から電子を奪い、自分自身が安定になろうとします。この様にして電子を奪われた有機物は結合を分断され、最終的には二酸化炭素や水となり大気中に発散していきます。
光触媒を塗装に使う。
塗料に二酸化チタンを混ぜる。
その効果は
- 1.汚れが付きにくい
- 二酸化チタンが紫外線を浴びると活性酸素を発生させ、活性酸素が空気中に発生している大気汚染物質を分解する作用があります。その作用により、光触媒塗料の塗膜には汚れを分解させる機能が発揮され、親水性機能(塗膜と汚れの間に雨水が入り込む)を発揮します。
- 2.空気浄化で空気を綺麗に
- 光触媒塗料の活性酸素が発生する機能により、空気中の汚染物質も酸化し除去します。その為、光触媒塗膜の周りの空気がクリーンになります。
- 3.塗膜の寿命が長い
- 光触媒塗料は耐用年数が長く、最長20年と言われております。そのため、塗り替えのコストが低く抑えることが出来ます。
- 4.環境に優しい
- 空気中のNOxやSOx、ホルムアルデヒドなどの有害物質()を除去します。酸化チタンそのものは無害で、化粧品などいろいろな用途に使われています。酸化チタン光触媒は同じ成分ですので、現時点では無害と考えられています。人体に悪い影響をあたえないということです。
デメリットは
- 〇コストが高い
- 合成樹脂塗料と比べると倍ぐらいかかる。
- 〇光(紫外線)があたらないところでは空気洗浄、抗菌効果がでにくい。
- 〇雨が当たらない、あるいは無機質な汚れ(さび、泥)には親水効果(汚れを洗い落とす)が発揮されない
- 活性酸素の働きは有機物分解機能を発生しますので、無機質には全く反応しない
- 〇施工に熟練が必要とされる。
- 塗装面に有機物が付着していると光触媒作用によりコーディング下の有機物も分解してしまうので、コーティングが剥がれ落ちてします。塗料の粘度が低くサラサラしている特殊な塗料であり、扱いにくく、効果的な施工場所選定、材質選定に深い知識が要求される。
- 〇塗装の実証が乏しいので技術開発途上である。
- 明確な耐用年数や人体への影響の試験的なデータに乏しいので、信頼性がえられていない。
参考 外壁塗装の達人 光触媒塗料のメリット
光触媒工業会 光触媒入門
http://www.photocatalyst.co.jp/toha/toha.htm
政府や企業の取り組みによりvocの大気中放散量は減ってきている。
改正大気汚染防止法(平成18年4月施行)では、法規制と自主的取組の2つの手法を組み合わせてVOCの排出抑制を進めています。それにより、平成12年より平成26年までの間vocの排出量が140万トンから70万トンへと半減してきています。
法規制
以下6種の対象施設について、排風能力や送風能力の下限値を設け、その基準(裾切基準)を上回る施設に排出基準値(濃度)を設定しています。
- 化学品製造関係施設
- 塗装関係施設
- 接着関係施設
- 印刷関係施設
- 工業用洗浄関係施設
- VOC貯蔵関係施設
自主的取り組み
業界や企業が自発的に計画を立てて、自社にあった方法で対策を実行できる仕組みです。 業界団体等が策定する自主行動計画において排出抑制の目標を設定。
業界団体等に加盟する事業者が、自社に適した取組を実施しながら、効果的な削減手法の横展開等協力しながら排出抑制をしてきました。
揮発性有機化合物(VOC)排出抑制における 自主的取組の成果 – 経済産業省 産業技術環境局 環境指導室
人や環境に優しい塗料であるために
塗装という作業は、人間生活の上でなくてはならないことです。無垢才を使った建築物であれ、表面を保護しなければ腐食や劣化がすすむことなります。
ぼろぼろになった壁は美観を損ねますし、人々の心もその姿を見て心すさんでしまいます。塗装という工程は無くてはならないことであるという前提で対処する必要があります。
日本において、法律の枠内では塗料の安全性についてドイツのようなきっちりとした規制やランクわけがされていないのが現状のようです。
塗料の使用規定については、人体に影響を与える可能性がある物質に関しては業界内での自主規制に委ねられてきているようです。それはそれで一定の成果はあるものの、やはり、きっちりした指針のようなものが必要になってくると思います。
ホルムアルデヒドに関してはF☆☆☆☆というようなものがあるので、他のものに関してもあってはいいのではないかと素朴に感じてしまいます。
その際に上記の中で取り上げられている、LCA(ライフサイクルアセスメント)という考え方が必要とされてくると思います。
これは自然塗料先進国であるドイツの製品の環境負荷に対する評価の方法です。
製品の原料調達、生産から消費、そして廃棄に至るすべての段階において、その製品が環境へ与える負荷を総合的に評価する手法のこと。
製品の使用や廃棄に伴う有害物質の排出の有無、処理やリサイクルの容易性など、ある特定のプロセスだけにとどまらず、原料採取、製造、流通などの段階での環境への負荷も評価範囲に含まれます。塗装の基礎知識 塗装の種類/自然塗料
自然塗料でもvocのまったくださないもの、塗装の必要のない素材、光触媒塗装など、新しい塗装製品が登場してきています。
深い内容は、開発研究者当事者ではないので、総評できないのですが、環境に負荷がかからない、人に優しいという方向に進んできていると思います。
こういう考え方を元に地球環境、人への影響などを総合的に考えてたシステムの構築、研究開発が環境に優しい塗装ということにつながっていってほしいと願っております。