ウィルスとの正しい付き合い方について

46億年前、
銀河系の星雲の中の渦の中で、星雲を構成している物質が集積され、
太陽が産まれ.
そして、
その周りに散らばる物質の破片が衝突しあい、
地球という天体が生まれた.


僕らの祖先は、もうそのころから、準備していたのさ。
細菌君たちは、それから5億年くらい先かなあ。
僕らは、細菌君たちのおかげで、
どんどん子孫を増やしていけるようになった。
細菌君、 
感謝 
感謝.


それまでは、
僕らは、誕生したての海の中で漂っているだけだったなあ。
細菌君の体に間借りしてもらい、
エネルギーを使わせてもらうことで、子孫をつなぐことが出来たんだ。
それはいまでも変わらないよ。

あれから40億年か
細菌君から、細胞へ子孫をつむぎどんどんおおきくなっていったね。
魚君や蛇君、
かえるくん、
ねずみくん、
みんな細菌が祖先になっているね。
ほら、
そこにみえている、
大きな桜の大木だって、同じさ。

こんな風になったのも、実は、僕らが、かかわっているのさ。
遺伝子っていうものを知っているかい。
普段はかぜまかせ、漂っているだけの僕らだけれど、
唯一、できることといえば、
僕らが持っている遺伝子を、みんなの中にいれることなんだ。
これって、とっても重要なこと。
だって、
みんなの体は、遺伝子によって組み立てられてきたんだ。

ぼくらの仲間のレトロ君はこんな風なことを言っていた。
みんなの遺伝子の配列の中に、
僕らの遺伝子の痕跡がしっかり残っているんだ。
みんなが、長年、今のような姿になったのも、
一部、僕らの遺伝子によって、形成されたもののなかで、
その環境に適応したものの結果なんだ。

僕らは、組合を作って、日々、地球の事をそれぞれ考えています。
小さくて見えないが、
いろいろな奴がいるよ。

植物部会のエー君、最近はどうだね。
はい、
僕らの仲間には、いろんな奴がおりまして。
作物の組織に住み着いて、
成長をさまたげたり、枯らしてしまったりするのもいますが、
たいていは、みんな平和主義なんだ。
赤潮なんかで、海の生態系のバランスが崩れたときに、
赤潮プランクトンを死滅させ発生を抑制したりしているやつがいるよ。

陸上植物にだって、みんな、仲良くやっているよ。

僕らは余りにも小さすぎて、みんな知らないことだけど。

そこへ動物部会のビー君が口をはさんできた。

僕らだって。
昆虫や、かえる、鳥や、サル、魚など、いろいろかかわってきたなあ。
僕たちが侵入することによって、
最初は、攻撃されてきたけれど、
最終的には、仲よしななっていったなあ。

皆、時には、けんかもするけれど、
なんだかんだいいつつも、
静かにおさまっています。
落ち着けるところを見つけてね。

wさんは某大学病院の感染症専門病棟に努める医師である。
ここのところ、患者の対応に追われ、
年中無休の日々が続いている。
看護師や、
病院内で働く人
すべても同じだ。

私の趣味は、釣りに行くことです。
魚なんて、一匹も釣れなくてもいいんです。
潮風に吹かれ、
竿を垂らして、
ひたすら、海面の動きを見ているだけでいいんです。
仕事のことは一切頭の中からひっぱりださず、
身体を海風にあてつづけているだけで、
なんか、ほっとする。
ああー、
釣り行きてー。

コロナ君、
なぜ、泣いているの。
えーんえん。
コロナ君ていう名前、
なんか素敵だね。
なんで、こういった名前なの。
ぐしゅんぐしゅん。
えーんえん。
えーんえん。

まだ、あどけない姿をしたコロナ君であった。
僕は知っているよ。
コロナて名前、
あの、太陽の周りを取り巻いている、
光でしょ。
太陽の王冠ともいわれている。
地球が、美しい天体であり続けているのも
コロナを通して、地球にエネルギーを届け続けているおかげさ。
ほら、
これ、しゃぶって、
元気を出しなよ。
おもむろに、飴をとりだし、コロナ君へさしだした。
ぐしゅんぐしゅん。
ふー、ふー、
ひー、はー

wさんは次から次へと切れ目なく訪れる患者の対応に、追われていた。
「人生で、最大の危機、いや、人類存続にかかわる一大事だ!」
新型コロナというやつは、なんて厄介なんだろう。
いつになったら家に帰れるのだろう。
看護師さんや、医療スタッフ、
みな同じだ。
今日も昼は、
カップラーメンか。
患者を救おうという使命感は当然あるものの、
これって、いつまで続くのだろうか。
心がぽっきりと折れるか、
身体が空中分解するのか
どっちが先だ。
自問自答が続く。
いやおうもなく、
壁に掛けられた、時計の針が
時を進める。
我々は、それを
無意識にも、
五感で、受け止めているだけだ。
そんな、
己をかんじる。

m老夫婦は律義者。
感染が、国内に広がり始めてから
今日まで
ずーと
自宅に引きこもっている。
人生で初めて、
ネット通販というものをはじめた。
生鮮食料品は、10日に一回、
人があまりいない時間を見計らって、
そそくさと
まとめ買いをし、
保管する。
年金暮らしなので、
元々、あまり出歩かないし、
お金も使わない。
世の人は、
snsを駆使して、
このような状況の中でも、
しっかりと、
人とコミュニケーションを取り、
それなりに、一日を過ごしている。
スマホは持っているが、
あまり使わない、
いや、
正直なところ、
使いこなせず、
持て余している次第である。
こんな年寄りに、
いまさら
メカニックな知識を要求しても、
酷な話だ。

新しい生活様式ってなんだ。
我々、引きこもり夫婦には、ぴんとこない。
手洗い、うがい、換気は重要だ。
それは、わかっている。
でも、
元々、
人とのコミュニケーションも、
外出もしないので、
家の中で、
悶々としているだけだ。
それが、
正解か。

コロナ君の仲間は、
あっという間に、
全世界を駆け巡ってしまった。
居心地が悪い、細胞君に、とりついてしまった。
「本意ではない」
「ああーほんいではない」
コロナ君は、
頭を抱え込んでしまった。
安住の地で、
平和にくらしていたのに。
人間という奴らが、我が物顔で、僕らを誘い出し、
拡散してしまったのさ。
僕らは、
それに対抗して、
何とか、
状況を打開しようと、
少しずつ、
変身をしている。

ヘルペス君がおもむろに声を発した。
昔は、派手にあばれたなあ。
いろいろな動物の中に入り込んで、
仲間をどんどん増やしていったよ。
ほら、
君が、今、大ナタを振るっている
人間という生き物にもね。
まあ、
今じゃ、
角が取れて、
まるくおさまっているよ。
時々、昔の癖が出るがね。
天然君みたいに、
免疫細胞君とさしでやりあったりしないよ。

そう、
その免疫細胞君、
あいつは、賢いね。
まともにやりあったら
討ち死にしてしまうよ。
天然君みたいに。

免疫細胞君がいるお陰で
僕らは、少しずつ変身し、
おだやかになった。
もう、
争いは、
まっぴらごめんだ。
悪い奴らが侵入してきたら、追っ払うことにしたよ。

コロナ君は、
その話に聞き耳を立て、
こくりとうなずいた。

人類存続の危機だ。
今まで、我々が積み上げてきたもの、
グローバリゼーション
豊かな暮らし、
繁栄を築いた恩恵を享受する一部の者に対してであるが、
それ以外の人々も含め
経済活動は停滞し、
砂丘に葛かれた、
砂の城のように、
風化し、
崩れ落ちていく。

組合長
人間という生き物が、
ワクチンというものを使って
免疫細胞君を焚き付け、
コロナ君たちの排除に乗り出しているようです。
それに対して、
かわしに架かっているようです。

んー
それは見ものだな。

え。
どういうことですか。

このようなことは、
今まで何回もあったことだよ。
でも、
ワクチンて言うやつは、
最近、みかけるようになったな。
なあに。
そのままほっとけば、
そのうち
おさまるよ。

医師や看護師、
医療関係者、
それを支えてきた
役人、
そして、
感染対策に
真摯に取り組んできた、人々。
皆、
必死た。

そして、
ワクチン接種により、
徐々に
おさまりをみせてきた。
人類は、
新型コロナウィルスに勝利したのだ。

やがて、
街に活気が戻り、
経済が、
かつての様に、動き出した。

まてよ。
本当に、勝利したのか。
感染は収まったのだろうか。

コロナ君は
自分の身の置き場を模索していた。
太古の昔から、
今日まで、
我々、ウィルスは
安住の地である、
宿主に身をおき、
営み続けてきた。
ところが
一旦、宿主の下から離れてしまうと、
落ち着く場所を求め、
再び、
旅に出る。
いや、
これは、
望まざるを得ない、旅に出されたのだ。
そして今、
戦っている。
相手としている、人間も
いや、
免疫細胞君も同じである。

組合長は言った。
コロナ君
これは
試練だよ。
きみは、
まだ、
とても若いが、
我々は
地球の歴史の中で
地球の一員として、
受け入れてもらう為に、
落ち着き場所を求め
葛藤する。
その、過程に
今、君がいるのだよ。
以前にも話をしたように、
我々の使命は、
地球にある
生きとし生けるものすべてのものが
安心して暮らせるよう、
手助けをしているんだ。
人間という生き物は、
君よりさらに若い赤子だ。
そのことを理解していないんだよ。
己の都合で、
地球の大気や、
水を 汚してしまい。
このままでは、
共倒れしてしまう。
だから、
人間にとっても、
これは試練だ。

きっと
これは、雨ふって地固まるがごとく、
地球にとっても
良い方向に向かうことなんだよ。

登場人物紹介

細菌君

生物の世界は、真正細菌、古細菌、真核生物という3つに分けることができます。その祖先を辿っていくと、約30億年前に分かれていったと推定されます。これらに共通するウィルスの遺伝情報が残っていることから、その時代以前には、すでにウィルスが存在していたとされ、その内部は、進化の過程で、常に何らかのウィルスの形質を引き継いでいるとされております。但し、文中で描かれているような、ウィルスが細菌の祖先か、細菌から分化したものかは、学者の間で、確定的なものは無く、議論が分かれている状況にあるようです。

レトロ君

レトロウィルスは、生物に感染し、その細胞の中にウィルスが持つ遺伝情報RNAを組み込み、痕跡を残す。これを遺伝子の内在性といわれ、内在性レトロウィルス(Endogenous retrovirus, ERV)と呼ばれている。このことにより、生物は、遺伝子情報を書き換えられ、多様性を持つものとして今日まで進化してきた。「地球上にいる生物は、ウィルスによる遺伝子の組み込みにより進化してきた。」というダーウィンの進化説に対抗したウィルス進化説なるものを唱えるきっかけとなったウィルスであります。

植物部会エー君

植物には、作物にダメージを与えるウィルスが知られておりますが、大多数は、生態系の調節にかかわるものであります。海洋には、植物プランクトンに寄生している、膨大な量のウィルスが存在しているようです。その量は、炭素換算で、2億トンになると試算されており、これは、カーボンニュートラルと叫ばれている昨今において、無視できない量であると考えられます。赤潮は、植物プランクトンの異常発生によるものとされておりますが、これを、ウィルスを使って、除去使用とする研究も進められております。

動物部会ビー君

ウィルスは、単独では子孫を増やすことが出来ず、生物の細胞の中に取り込まれて、その生物の細胞の中にある物質(たんぱく質や核酸)を利用して、仲間を増やすことになる。その生物をウィルスの宿主としている関係にある。
そして、そのウィルスごとに、宿主がいることになる。新型コロナウイルス(COVID-19)の場合は、蝙蝠が宿主である可能性が高いといわれている。宿主となる、動物は、感染しても、発症しないようである。また、必ずしも、病原性を持つものだけではないようです。人間の母親の胎盤に赤ちゃんが宿るとき、母親自身のたんぱく質と異質なものが胎児に存在するときに、そのままでは免疫システムが作動して攻撃を加える所を、ウィルスが膜を作り、守っとくれる。このような、有用な働きもウィルスが担っているようです。

コロナ君

コロナウイルスは1万年前というのが1つの有効な説です。コロナウイルスは遺伝情報としてRNAをもつRNAウイルスの一種(一本鎖RNAウイルス)で、粒子の一番外側に「エンベロープ」という脂質からできた二重の膜を持っています。ヒトに蔓延している風邪のウイルス4種類と、動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類が知られている。その中でも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は変異を繰り返し、今日のグローバル社会において、多大な損傷を与え続けている。

wさん

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の治療に奔走する医師。

m老夫婦

都会の団地に住む年金暮らしのお年寄り夫婦。

ヘルペス君

多くの動物が感染しており、人間が免疫力が低下しているときに、帯状疱疹になる症状の原因となるウィルスです。
ヘルペスウィルスは世界で50歳未満の37億人(全体の67%)が1型に、15~49歳までの4億1700万人(全体の11%)が2型に感染していると推定され、しかもほぼ常在しているような状態です。地球の進化において、動物が登場する5億年前には、存在していたといわれております。かつては、強い病原性を持っていたようですが、長い年月をかけて進化し、感染しても、症状が現れにくいものになってきたウィルスです。

天然君

致死率がとても高いウィルスですが、一回感染してしまうと、終生免疫が続くとされています。但し、1796年のエドワード・ジェンナーの種痘法の考案により、1980年に人類が初めて根絶に成功した感染症になりました。症状が明確であり、病原性が高いことがワクチンの出現によって、ウィルスの生存戦略に不利に働いて、消滅してしまったといわれております。

免疫細胞君

生物には、ウィルスなどの病原体が体内に侵入してきたときに、それと戦う為に、免疫システムが作動するようになっております。細胞が、この時、サイトカインシグナルを発して、免疫細胞を呼び出します。この免疫細胞が、病原体を攻撃して、治癒の方向に導くのでありますが、時には、一箇所に過剰に活性化されすぎて制御不能になり、サイトカインストームとなり、細胞に損傷をあたえることになる場合もあります。COVID-19の重症化は、ウイルス自身が原因というわけではない。自己免疫によるサイトカインストームが肺をはじめとした複数の臓器で炎症を引き起こし、患者自身を死に至らしめると考えられている。

組合長

ウィルス仲間の長老。天の声。

ワクチン君

ワクチンは病原体(ウイルスや細菌など)そのもの又は、病原体を構成する物質などをもとに作られたものです。
ワクチン接種は感染症に対して、病原体に対する免疫をつけたり、強めたりすることの為に行います。ウィルス感染症を治癒する為に、ウィルスそのものを投与することによって、免疫をつける方法を取ることが、基本にあります。
新型コロナウィルス(COVID-19)の場合はメッセンジャーRNAという、核酸のもつ遺伝情報を利用します。
 ウィルスが増殖する為には細胞表面への吸着 → 細胞内への侵入 → 脱殻(だっかく) → 部品の合成 → 部品の集合 → 感染細胞からの放出 という工程が必要となります。メッセンジャーRNAは「部品(たんぱく質)の合成」する工程において、設計図として働きます。このメッセンジャーRNAだけを強制的に投与することにより、ウィルスに感染させたようにみせかけ、免疫を引き出させる仕組みを利用しております。ウィルスそのものを注入する訳ではないので、そのことにより、発症することも無く、人の遺伝子に影響を与えないとされております。

参照

ウィルスとは

ウィルス歴史

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) について

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策

新型コロナウィルス今後

書籍

  • ネオウィルス学 [集英社新書] ウィルスの共生と進化の未来を探る書

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